心理検査の目的

心療内科、精神科の診療は、内科や外科のような科学的なデータがほとんどありません。
患者さんの語られる言葉を通して、主治医がそれを理解し、どのように困っていらっしゃるか想像することから診療が始まります。
そんななか、心理検査は、「患者さんを知る」ための重要な情報となり、診断や治療方針を決める大きな助けとなります。

当院では、知的能力や発達に関する検査、パーソナリティに関する検査、認知機能や記憶などの神経心理学に関する心理検査を行っています。
得られた所見は、主治医による診断や治療の際に一つの資料として用いられることになります。
当院では臨床心理士、公認心理師が検査を担当いたします。

また、有料になりますが、ご希望のあった患者さんには心理検査の結果を分かりやすく説明した報告書を作成し、心理士との面接で結果をフィードバックするサービスを行っております(詳細は受付にてお尋ねください)。

当院では、主に以下のような心理検査を実施しております。

心理検査の種類

知的能力の検査

WAIS-Ⅳ(ウェクスラー成人知能検査Ⅳ)

全体的な知的能力や記憶・処理に関する能力を測る検査として国際的に使用されており、その信頼性が高く評価されています。
具体的には、言葉による理解力・推理力、視覚的な情報を元に答えを考える力、耳からの情報を一時的に記憶しながら作業する力、視覚情報を素早く処理する力といった4つの知的能力を評価いたします。
困りごとの背景にはこういった能力の得意・苦手や偏りがあることが多く、生活上での工夫を見つけることの一助となります。
また、発達障害の診断を進めていくうえでも、重要な情報となります。
心理士と1対1で検査を行い、2時間ほどかかります。

WISC-Ⅳ(ウェクスラー児童知能検査Ⅳ)

5歳0ヶ月~16歳11ヶ月のお子さんを対象とした児童用の検査で、WAIS-IVと同様の4つの知的能力を評価いたします。
お子さんの発達状況や、得意不得意を把握するうえで重要な情報となりますが、その結果だけで発達障害の診断が確定するわけではありません。
診断に関わらず困りごとの背景にこれらの能力の得意苦手や偏りがある場合には、検査の結果や検査場面でのご様子を元にご家庭や学校でどのような支援やサポートが必要か検討することにつながります。
心理士と1対1で検査を行い、2時間ほどかかります。

精神発達検査

MSPA(発達障害用の要支援度評価スケール)

患者さんと養育者の方にアンケートを実施します。
それに基づき、幼少期からの発達歴や困りごとを聞きながら心理士と一緒に進めていく検査です。
多彩な症候をみとめ、個人差も大きい発達障害者の支援のニーズを特性別に9つの項目で評価し、レーダーチャートにして分かりやすく提示します。
ご自身の特性理解が深まるだけでなく、家族や周囲の方々とこの検査の結果を共有することで、より適切な支援を受けることにつながります。
心理士と1対1で検査を行い、1~2時間ほどかかります(ご協力いただける場合は、ご家族や周囲の方からお話をうかがうこともあります)。

AQ(自閉症スペクトラム指数)

自閉症スペクトラム指数は、個人の自閉症傾向を測定する目的で開発され、自閉症スペクトラム障害のスクリーニングに用いられています。
研究と臨床の両方で国際的に広く利用されており、自閉症の新しい考え方に対応した信頼性の高い自記式の心理検査です。
具体的には、「社会的スキル」「注意の切り替え」「細部への関心」「コミュニケーション」「想像力」の5つの下位尺度を備えおり、「あてはまる」から「あてはまらない」までの4段階で回答します。
こちらは、ご自身がどう感じているかを答えていただくアンケートタイプの検査となります。

ASRS(成人期ADHD検査)

DSM-5(米国精神医学会が作成した精神障害の診断と統計マニュアル)に準拠した、大人のADHDをスクリーニングするための検査です。
うつ病、不安障害、適応障害等の背景にADHD特性の存在が疑われる場合や、大学や企業等でのメンタルヘルスチェック時に大人のADHDを発見するための簡易な検査としても利用されています。
質問項目は18項目で構成されており、「あまりない」「ときどき」「しばしば」「いつも」の4つの中から1つだけを選択します。
実施時間は10~15分程度と短時間です。
こちらは、ご自身がどう感じているかを答えていただくアンケートタイプの検査となります。

CAARS(コナーズ成人ADHD評価スケール)

18歳以上を対象としたADHDの症状重症度を把握するための評価尺度です。
検査は「自己記入式」と「観察者評価式」の2種類あります。
複数の回答者からの情報をもとに包括的に評価を行います。
観察者とは、家族、友人、同僚など最近の対象者をよく知る人を指します。
ADHDの人とそうでない人を判別するための項目(ADHD指標)が含まれます。
回答に一貫性があるか判別する指標(矛盾指標)があるのが特徴となります。

上記の心理検査以外にも、パーソナリティ検査(描画テスト、SCT(文章完成法テスト)、MMPI等)を医師が必要に応じてご提案をすることもあります。