不眠症とは

「不眠症」は睡眠障害のひとつです。
さらに、夜眠っているにも関わらず、日中にも強い眠気が生じ、実際に眠り込んでしまうこともある「過眠症」、昼夜のサイクルと体内のリズムがずれてしまう「概日リズム睡眠障害」などがあります。

わが国の成人の約20%、つまり約5人に1人が不眠に悩んでおり、15%の人が日中に眠気を感じているといわれています。
さらに自分が不眠症では、と感じている人のうち、実際に治療を受けていない人は約70%に上るとも報告されています。

不眠症といっても、その症状は人それぞれです。

  • 入眠困難(寝付きが悪い)
  • 中途覚醒(夜中に何度も目覚めて困っている)
  • 早朝覚醒(早く目覚めすぎて困っている)

について具体的な症状を把握する必要があります。
さらに、必要とされる睡眠時間には大きな個人差があります。
現在の日本人の睡眠時間は平均7時間程度ですが、3時間ほどの短時間の睡眠で間に合っている人もいれば、10時間以上眠らないと寝足りない人もいます。
「現在の睡眠(時間)では疲れが取れない」、「昼間起きているときに、睡眠の問題で活動に支障がでる」などという時は、不眠症と診断し、治療が必要であると考えます。

現代社会はライフスタイルも多様化し、以前のように一定の生活リズムが保ちにくくなっています。
特に新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、在宅勤務や自宅学習をしている方がとても多く、オンとオフ、職場、学校と自宅といった環境の切り替えがうまくできず生活リズムが乱れやすくなっているケースが非常に増えています。
さらに高齢化によって、睡眠時間が短くなり、生活リズムがずれてしまい不眠症に陥っている方も少なくありません。

治療について

不眠症の治療では、まずその要因を考えることから始まります。
睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害、レストレスレッグス症候群(むずむず足症候群)など、何らかの身体的な病気が疑われた場合は、それぞれの専門医による診療が必要となります。
うつ病や不安障害など精神的な要因があれば、その治療を優先する必要があります。
さらに生活リズムや睡眠環境の乱れ、寝る前の飲酒習慣があれば、それらを改善していくことも大切です。
そのうえで、適切な投薬による治療を行っていくことが有効となります。

※「不眠症」の治療に用いられる睡眠薬には、以下のようなものがあります。

  • ベンゾジアゼピン系睡眠薬
  • 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
  • メラトニン受容体作動薬
  • オレキシン受容体拮抗薬

従来、睡眠薬は依存性があるのでは、と心配されることも多くありましたが、現在では依存性の少ない、休薬による離脱症状の少ない薬も出てきています。
これらを患者さんの状況に合わせて、適切に使用していけば、不眠症の改善に有効なものとなります。
また、不眠症を引き起こしているのがうつ病や不安障害などの他の精神疾患の場合は、そちらに対する治療も同時におこなっていきます。

当院では不眠症の治療に際し一人ひとりの患者さんとよくお話をさせていただき、その原因を探ったうえで、適切な治療法を進めてまいります。
例えば、睡眠・覚醒リズム表を記録していただくことで、自分では気づいていなかった睡眠習慣が明確になり治療に役立てることができます。
夜勤などでなかなか生活リズムを変えられない方や、投薬治療に抵抗感のある方もいらっしゃるかと思います。
そうした患者さんにも様々な対応策をご提案したり、投薬を必要最小限に抑えたりといった対応をしております。